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○ キューバ危機〜苦悩と決断 1962年10月16日、1枚の写真にホワイトハウスは震撼した。アメリカ軍偵察機が、本土からわずか140Kmしか離れていないキューバに射程距離2100Km、広島型原爆の60倍規模の準中距離弾道ミサイル基地を確認したのだ。 キューバへの即時侵攻を強く迫る軍部と外交による平和的解決を模索したいケネディーは対立し苦悩した。 もしこのミサイルが発射されれば、ソ連との核戦争は避けられない。そして第3次世界大戦へ・・・最悪のシナリオが脳裏をよぎる。キューバへの 即時侵攻、空爆、海上封鎖、外交交渉・・・様々な対応策が検討された。 ジョン・F・ケネディ大統領45歳、弟ロバート・F・ケネディ司法長官36歳、そして大統領特別補佐官ケネス・オドネル38歳。アメリカ建国以来最も若い閣僚だった彼らが、世界を核戦争寸前にまで追いつめた「キューバ危機」に立ち向った。
キューバ危機は決して突発的に起こった事件ではない。 その背景にはアメリカとソ連を中心として世界を二極化していた東西の冷戦構造が深く関わっている。
「9月評価」によりキューバのミサイル配備を否定したが、その後も軍部の強攻論や世間の不安を払拭するだけの確たる証拠が無いままケネディーの苦悩は続いていた。 10月9日、ケネディーはキューバ上空からミサイルの有無を確認する為の偵察飛行を指示し、10月14日にU2偵察機が飛び立った。 約10分間に及ぶ空撮を終えて帰還した偵察機から約8,000枚の写真が分析にまわされた。 CIAの分析の結果、ケネディーが最も恐れていた事態が明らかとなった。 写真にはソ連で以前に確認されたものと同種のミサイル基地が2箇所とミサイル運搬用のトレーラー、ミサイル発射台などが確認されたのだ。 不在だったマコーン長官に代わり報告を受けたクラインCIA副長官は専門家を集めて再度徹底した分析を行うように指示し、15日の夕方ホワイトハウスに事実を伝えた。 連絡を受けたバンディー大統領特別補佐官は中間選挙の遊説で疲労しているケネディーを気遣い、大統領への報告を翌日まで待った。
後日明らかになった驚くべき事実がある。 10月28日運命の日、実はケネディーはテレビ演説の予定など無かったのだ。 この日の朝確かにケネディーは教会に行ったが、日曜日の朝に教会に足を運ぶことはアメリカ人にとって当然のことで、大統領に限ったことではなかった。 また、AM9:00からケネディーの演説がテレビ放送される予定も確かにあったが、これは海上封鎖を宣言した時の模様を再放送する予定だった。 つまり、フルシチョフに伝えられたケネディーの「宣戦布告演説」は、完全なる誤報だったのである。 しかし、この情報がフルシチョフの背中を押し歴史的決断をさせたことは間違いない事実である。 誤った情報に翻弄されたキューバ危機は、誤った情報により終結した。
キューバ危機が終息した後、東西冷戦構造に歴史的な変化が起こる。 この事件はアメリカとソ連両国に対して大きな教訓を残した。誤った情報や疑念が思いもよらぬ方向に進み世界を核戦争寸前まで追い込んだ事は、両者の対話が重要である事を思い知らせた。 この教訓を生かし米ソ両国は「ホットライン協定」に調印し、ホワイトハウスとソ連首相官邸が「ホットライン」と呼ばれる直通電話でこの時初めて結ばれたのだった。 その後もケネディーはこの対話路線を尊重し軍拡や核実験に関する見直しを進め、東西冷戦は終結に向けて大きな一歩を踏み出した。
ソ連のキューバ撤退を知らされたカストロは激怒した。なぜなら事前にカストロになんの説明や相談も無くフルシチョフが独断で決定したものだったからだ。 死を覚悟してまで貫こうとしたカストロやキューバ人の愛国心はいつしかアメリカとソ連の対立に利用され、屈辱的な結末を迎えた。カストロが怒るのも当然である。 不信感により孤立したキューバに対しては、米ソとの仲介役に国連が動いたが、カストロは全ての干渉と査察を拒否した。 結局、最終的に査察を受け入れたカストロは、アメリカに対してキューバへの不公平な外交姿勢の是正などの要望を提出したが全て無視され、現在もいまだに受け入れられていない。
1963年11月22日、ケネディーはダラスで暗殺された。そして1964年10月11日、ソ連ではフルシチョフが失脚する。平和に向かって動き出したかに思われた米ソの関係は2人のリーダーを失った事で闇へと迷走を始めた。 両国は再び軍拡を図り、東西はキューバ危機以前のように睨み合うことになる。
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